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【体験談】「演劇」が変えた、ウェストロック社の次世代リーダー:身体と感情で学ぶ、新しいリーダーシップの形

リーダーシップ人材開発組織開発

2025年2月4日

コーチングを通して次世代リーダー育成を支援する、35 CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)CEOの桜庭です。今回はコーチングプログラムの体験談をお届けします。 世界40か国で事業を展開する世界最大の包装資材メーカー、スマーフィット・ウェストロック社の日本法人であるウェストロック合同会社。同社は、マルチパックのパイオニアとして1969年に創業し、現在50人を超える社員がいます。しかし同社は、ある経営課題を抱えており、今回、35 CoCreationのコーチングプログラムを受講することを決定。2024年12月現在もプログラムが進行中です。 今回の記事ではプログラムを通じて、どのように課題を乗り越え、組織が成長してきているのか、同社日本事業を統括するゼネラルマネージャー園田悟さんと人事部長の橋本ルミさんに伺いました。 -そもそもコーチングプログラムを受けようと思われたきっかけについて教えてください 園田さん:2023年6月に入社して以来、社員一人ひとりが会社の成長に責任感を持って動いてくれないことに、強い危機感を感じていました。M&Aを繰り返してきた歴史を持つ当社では、トップダウンで方針が決まることが多く、社員の声が本国や上層部に届きにくい環境がありました。社員たちの間には、「言っても無駄」という諦めの空気が漂い、活気のない組織になっていました。 もう一つ、深刻な課題は英語力の不足でした。グローバルなビジネスを展開する当社にとって、世界中の人々と円滑にコミュニケーションが取れないことは、大きなハンディキャップでした。 このままでは、会社の成長を阻害しかねない。そうした危機感から、何かを変えなければと、必死に打開策を探していました。 そんな時、橋本さんがチームに加わってくれてより深いレベルでの変革を目指し、コーチングプログラムの導入を決めました。 橋本さん:私が入社したのは今年の3月ですが、園田さんの話を聞いてまもなく、人事担当として、社員一人ひとりの成長を支援したいという思いに駆られました。これまでの経験上、座学の研修だけでは、社員の行動はなかなか変わりません。社員一人ひとりの心に火をつけ、自ら成長できるような環境を作りたいと考え、「人の在り方」にアプローチするような、コーチングプログラムの導入を提案しました。 そこで元々ご縁のあった桜庭さんが思い浮かび、園田さんにご紹介したのがきっかけです。 -コーチングプログラム以外にも、様々なアプローチを検討されたとのことですが、最終的に35 CoCreationのプログラムを選ばれた理由は何だったのでしょうか? 園田さん:当初は、社員の英語力向上のための英会話レッスンや、1on1コーチングの導入も検討しました。しかし、それだけでは物足りないと感じていたのです。単に英語が話せるようになるだけでなく、グローバルなビジネスで求められる『考え方』や『コミュニケーション力』を根底から変えたい。そんな思いが強くなりました。 1on1コーチングも、上司と部下が一歩踏み込んでコミュニケーションすることで、一人ひとりの気づきにはつながるかもしれませんが、組織全体のカルチャーを大きく変えるには、もっと根本的なアプローチが必要だと考えました。 最終的に35 CoCreationにお願いしたのは、まさにその『根底』に深く入り込み、社員一人ひとりの『在り方』を変えてくれると感じたからです。社員が自分自身と向き合い、成長を実感できるような、そんなプログラムに惹かれました。 -人の在り方からアプローチするオントロジカルコーチングは、自分自身の内なる声に耳を傾け、心と体のつながりを深めることで、より人として成長するための手法です。これにより、単なる『指示や管理を行うだけのリーダー』から、チーム全体を共に成長させる『次世代のリーダー』へと進化できるのです。 園田さん:生産工場を持つ当社では、多岐にわたる専門分野を持つ社員が活躍しています。営業、サプライチェーン、物流、デザインなど、それぞれが持つ高い専門性を活かしつつ、組織全体の成長を牽引し、より良い未来を共創できるリーダーを育成したいと考えていました。 特に、若手社員には、単に指示を待つだけでなく、自ら考え、行動し、チームをまとめていくような、より主体的なリーダーシップを発揮してほしいと考えています。今回のプログラムは、まさにそのような私たちの思いに合致するものだと感じました。 そこで各部署から次世代リーダー候補となる5名を選抜し、プログラムを受講してもらうことにしました。 -今回のプログラムでは、演劇ワークショップというユニークな手法を取り入れたオントロジカルコーチングを体験していただきました。実際にコーチングを受けてみて、どんな気づきがありましたか? 橋本さん:参加者たちは、演劇ワークショップという予想外の展開に最初は戸惑いながらも、歌ったり、踊ったり、時には心の奥底から叫んだりと役に入り込み、思い思いに表現を楽しんでいました。 特に「この状況では、どう振舞えばいいだろうか?」「このセリフをどう伝えたら、相手に最も効果的に届くか?」「この表情で、役の心の動きをいかに表現できるか?」と自問自答しながら、様々な感情を表現しようとする姿が印象的でした。 自分とは異なる価値観や考え方を持つ人々の立場に立って心の動きを理解しようとする試みは、まさにリーダーシップ育成に不可欠な「共感力」を養う上で、非常に有効な経験だったと思います。「自分なのに自分じゃない」という不思議な感覚の中で、普段の自分では考えもつかないような行動や感情を体験できたのではないでしょうか。 また「一つのミュージカルを成功させたい」という強い一体感を持ち、集中して取り組んでいた姿が印象に残っています。互いを尊重し合い、協力し合いながら、普段とは異なる自分を引き出そうと試みているようでした。このような実践的な経験は、リーダーに大切な「コミュニケーション能力」や「自信」を養う上で、理論だけでは得られない貴重なトレーニングになったと思います。 園田さん:研修から戻ってきたメンバーを見て、私は率直に感動しました。皆、表情が輝き、目がキラキラしているのです。 難しいビジネス交渉でも、以前は、「こうしたい」「ああしたい」と自分の意見を一方的に押し出すような場面が多かったのですが、今では、相手との共感や理解を深めようとする姿勢が強く感じられます。ワークショップで学んだ表現方法を活かし、相手の心に響く言葉を選び、丁寧に説明しようとする姿に、彼らの成長を実感しました。 もちろん、これらのスキルを完全に身につけるためには、日々の業務の中で実践を重ねていく必要があります。しかし、今回の研修で得た経験と知識を礎に、彼らがさらなる高みを目指し、成長していくことを確信しています。 -リーダーの皆さんがコーチングを受けるようになってから、会社全体にどんな変化が見られましたか? 園田さん:プログラムを受講したメンバーは、社内全体にポジティブな影響を与えていると感じています。受講生たちには、全社会議でグループディスカッションのファシリテーターを任せるなど、積極的に活躍の場を与えていますが、彼らが堂々とリーダーシップを発揮する姿を見るたび、周囲の社員も刺激を受けているのが分かります。とてもいい循環が起こり始めていると感じていますね。 橋本さん:受講生からは「もっとやりたい」といった前向きな声が上がっていて、人事としても大きな手応えを感じています。 彼らの中に、新しい可能性が芽生えていることを実感しています。 日々忙しく働く中で、自分と向き合う時間を持つことは容易ではありません。しかし、このプログラムを通して、受講生たちは自分自身と向き合い、より自分らしい働き方を見つけることができたようです。仕事に対するモチベーションも上がり、どこかスッキリした表情の彼らを見ると、私たちも本当に嬉しいです。 園田さん:今後はこのプログラムを土台に、2期生、3期生と輪を広げていくことで、組織全体が一つの大きなチームとなり、互いを高め合いながら成長していく姿を想像しています。それによって次世代リーダーの育成だけでなく、会社のさらなる発展へとつながり、持続的な成長を実現すると確信しています。 ありがとうございました! 【会社概要】ウェストロック合同会社 スマーフィット・ウエストロックは、持続可能な紙とパッケージングのグローバルリーダーとして、40ヵ国で500以上のパッケージングコンバーティング事業と63の製紙工場を展開しています。日本法人であるウェストロック合同会社(2024年12月31日に合同会社に社名変更)は、創業1969年、日本のマルチパックのパイオニアとしてスタート。国内屈指の生産力を誇る「島田工場」は、マルチパック専用工場として1981年から稼働し、40年以上の実績があります。年間3億枚の供給能力を誇り、色彩や階調を忠実に再現できる「国内屈指のグラビア印刷機」を備えた生産設備があります。HP:https://www.westrock.com/company/japan 本記事は、35 CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)の「note」にも掲載しております。

社員のエグゼクティブプレゼンスを高めるたった一つの方法

コーチングリーダーシップ人材開発

2024年12月16日

今回は、組織サーベイについての投稿第2弾です。組織や社員の課題を可視化する上で、サーベイは効果的なツールです。しかし、同じ評価項目であっても、その背景や文脈は人それぞれ異なり、時には深い理解や考察が必要です。 前回はサーベイに隠された社員の本音についてお話しましたが、本記事では、サーベイ結果の中でも特に改善に悩むことが多い「エグゼクティブプレゼンス」に焦点を当て、抽象度の高い評価結果から具体的な改善策につなげるための有効な方法を解説します。 エグゼクティブプレゼンスという「呪い」 コーチングにおいて、受講者から最も多く寄せられる課題の一つが、「エグゼクティブプレゼンスが低い」という悩みです。 人事評価で用いられることの多い360度サーベイで、エグゼクティブプレゼンスが低いと評価されると、多くの場合、「このままでは昇進は難しい」という判断を下されがちです。そのため、昇進を望む人たちは、エグゼクティブプレゼンスを高めるために必死になり、「自分はエグゼクティブプレゼンスがないからダメなんだ」と自信を失ってしまう人も少なくありません。 ではそもそも、『エグゼクティブプレゼンス』とは一体何なのでしょうか。「上に立つ人に求められる資質」「一流の存在感」とも訳されるこの言葉。一言で定義することは難しく、明確に答えられる人は、まずいないでしょう。捉えどころのない概念だからこそ、多くの人がエグゼクティブプレゼンスの呪縛に囚われているといえます。(私も実際、過去に自身のエグゼクティブプレゼンスが低いと評価された経験があり、形のない“ゴースト”に縛られ、苦しみました) 『エグゼクティブプレゼンス』という言葉に対する捉え方は、実に人それぞれ。 例えば、「発言量が少ない」だったり、「反対意見に対して自分の考えを明確に示せていない」だったり、エグゼクティブプレゼンスが低いとされる要因には様々な可能性があり得ます。 360度サーベイでは上司、同僚、部下、それぞれが異なる視点からこの言葉の意味を解釈しているため、まずはその多様な解釈を整理することがコーチングの最初のステップとなります。 涙のプレゼンターがグローバルリーダーに昇格するまで ここで一つ、エグゼクティブプレゼンスにちなんだ具体的な事例をご紹介します。 会社員のアキコさん(仮名)は、プレゼンなどで緊張すると涙が出てしまうという傾向がありました。プレッシャーを感じると呼吸が浅くなり、酸素不足で涙が出てしまう体質だったのです。英語でのプレゼンテーションでは、特にこの傾向が顕著でした。彼女は自分の考えを正確に伝えたいという強い気持ちから、極度の緊張状態に陥り、呼吸が浅くなることで涙が出てしまうのです。 しかし周囲からは、それが感情的な弱さだと認識され、すなわちリーダーになるべき立場としてはエグゼクティブプレゼンスが欠如していると捉えられていました。 彼女は、「ごめんなさい、これはちょっと体の反応なんです」と説明すればよかったのですが、周囲が勝手に「アキコさんはすごくつらいんだな」「プレッシャーに弱いんだ」と解釈し、そのフィードバックを繰り返すことで、アキコさん自身も「私はやっぱりプレッシャーに弱いから泣いちゃうのかもしれない」「やっぱりこういう場面でうまくできないから私はダメなのよね」と、次第にそう思い込んでしまったのです。 コーチングを通して、彼女は自分の意図と周囲の受け取り方の間に大きなギャップがあることに気づきました。何度かのセッションを通じて、体の反応を事前に察知しコントロールすることで、周囲の誤解を解けることに気づいた彼女は、呼吸法などのトレーニングを重ね、緊張を克服しました。その結果、アキコさんは、大規模なグローバルプロジェクトのリーダーとして活躍し、見事成功を収めることができました。 この事例からもわかるように、エグゼクティブプレゼンスは、様々な要素が複雑に絡み合ったものです。そのため、エグゼクティブプレゼンスを高めるためには、個々の状況を深く理解し、一人ひとりに合ったアプローチを選ぶことが求められます。 しかし、アンケート調査などでは、エグゼクティブプレゼンスのどの部分が問題となっているのか、具体的に特定するのが難しいことが多いです。例えば、「決断が遅い」「コミュニケーションが不十分」といった項目と、エグゼクティブプレゼンスの項目、どちらにも指摘があると、それらと関連付けられることがあります。 しかし実際にコーチングを通じてより深いレベルでの対話をしていくと、まったく別のところに、原因が判明することがあります。 特に、エグゼクティブプレゼンスのように、捉え方が人によって異なる抽象的な概念については、しっかり対話しながら、その人ならではの状況や背景を深く理解することが重要です。そうすることで、その人が抱える「見えない壁」を可視化し、具体的な解決策へと繋げていくことができるのです。 アキコさんのケースでは、自分の涙が生理的な反応であることを認められたことで、周囲の評価に振り回されることなく、自分自身を受け入れることができるようになりました。 その後の彼女が素晴らしかったのは、緊張で涙をこらえている自分と同じような人の存在に気づき、重要な会議の前に「まずちょっといいですか、みんなで深呼吸をしましょう」と提案したそうなんです。「今日すごく重要な局面で私も緊張してるので、皆さんも1回立ってストレッチして深呼吸しましょう」と。この行動は、グローバルなミーティングでも高く評価され、結果的に彼女を昇格させたのでした。 エグゼクティブプレゼンスを高めるたった一つの方法 アキコさんは、コーチングの中でこれまで心の奥底に隠していた傷や弱みを素直に打ち明け、自己と向き合いました。その結果、自己肯定感が大きく高まり、その心の余裕が周囲への行動に現れ、エグゼクティブプレゼンスの向上にも繋がりました。 アキコさんは、コーチングの経験を「癒された」と表現します。私たちは日常的に様々な評価に晒されていますし、特に仕事においては常にジャッジの対象。コーチングは、そんな日常から離れ、自分自身と向き合う貴重な時間です。アキコさんのように、コーチング後に「癒された」と感じるクライアントは多いものです。 それは、決して評価されない安全な空間で、これまで隠してきた心の傷や弱み、さらにはエゴや欲まで、ありのままの自分を受け入れてもらえるという、安心と信頼があるからこそです。 あくまでもサーベイは、より深い対話への入り口です。社員のエグゼクティブプレゼンスを高めるためには、信頼関係を築き、一人ひとりの心の奥底に寄り添うことが大切です。そうすることで初めて真の課題を捉え、解決策を見出すことができるのです。 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。今回は組織サーベイ編第二弾でした。コーチングの事例が少しでも皆さんのチームビルディングのお役に立つことができれば、嬉しいです。 今後も私のコーチングセッションの体験談やコーチングのテクニックをお伝えすることで、みなさんが組織のリーダーとして活躍するための参考になればと思っています。不定期にはなりますが、次回の投稿もぜひお楽しみに。

Noteコラム|【イベントレポート】島根県出雲市で「企業で外国人社員をどのように活かすか」をテーマにパネルディスカションを実施

人材開発

2024年9月18日

35 CoCreationのNote記事掲載のお知らせです。 今回は、島根県出雲市で開催された、「外国人社員の活かし方」に関するパネルディスカッションの模様をレポートします。 多様なバックグラウンドを持つ人材が生き生きと活躍できるインクルーシブな職場環境を育んできた35 CoCreationの代表の桜庭理奈氏がモデレーターを務め、多様な背景を持つ人で構成される組織運営に携わっていたり、実際に外国人社員を雇用している地元企業の代表2名がパネリストとして参加しました。 パネルディスカッションでは、外国人社員の採用に関心を持つ企業の経営者や社員が集まり、活発な議論が交わされました。外国人社員の採用がもたらすメリットだけでなく、課題についても具体的な事例を交えて共有され、外国人社員を長く働いてもらうための組織作りについて、具体的なヒントが得られました。 島根発!ディスカッションと質疑応答から見えてくる、リアルな「外国人社員の活かし方」 ダイバーシティ&インクルージョンは、もはや組織のマネジメントに欠かせない要素になってきました。にもかかわらず、企業が外国人社員をどのように採用し、育成しているのかという現場の声を知る機会は多くありません。今回のイベントレポートには、多様な人材が力を合わせて働く組織を作るヒントが満載です。 自社の多様化を図りたいと考えている方や、外国人社員との共存について悩んでいる方は、この機会にぜひご一読ください。 https://note.com/35cocreation/n/n5bf638c89de8 外国人社員の採用を検討している方必見!

Noteコラム|なぜ仕事を抱え込んでしまうのか?“手放せない”リーダーの4つのタイプと処方箋

リーダーシップ人材開発

2024年9月2日

これまで多くのエグゼクティブコーチングを担当してきた中で、「自分が動かさないと何も進まない」「部下に任せるのが不安」「自分でやった方が早い」といった考えを持つリーダーを多く見てきました。しかし、こうした「仕事の抱え込み」は、リーダー自身の負担を増やすだけでなく、組織全体の成長を阻む要因にもなりかねません。 本記事では、そんな仕事を手放せないリーダーを4つのタイプに分類し、その背景にある心理と解決策を深掘りしていきます。Noteの記事をご覧ください。 https://note.com/35cocreation/n/n6004bddac8c2

JustCo主催イベント『Just Evolve 次の自分へ行け 』に桜庭理奈が登壇

コーチングリーダーシップ人材開発

2024年4月15日

次世代リーダーに求められるコーチングメソッドを紹介 2024年3月5日(火)JustCo新宿ミライナタワー(新宿)とBASE managed by JustCo(虎ノ門)の二拠点にて、コワーキングスペースJustCo主催イベント『Just Evolve 次の自分へ行け〜迷わず進め!新米リーダーを未来へナビゲート〜』に35 CoCreation合同会社 CEO 桜庭理奈が登壇しました。 業種も、役職も、ビジネスの規模も異なる様々な企業や個人が集まり、同じ空間を共有しながらそれぞれが成長を目指しJustCoを利用する方々の リーダーシップってなに? リーダーシップのために、なにをしたらいいの? よいチームや会社ってどんな組織なの? といったお悩みにこたえるため、桜庭から次世代リーダーの在り方やコーチングメソッドを紹介しました。 当日の桜庭の講演内容を抜粋しながら、イベントの内容を振り返ります。 組織文化づくりに必要なこと まず、林檎の木のように、組織には、カルチャー(空気感)、組織(木)、リーダー(土)、人材(根)の相関関係が存在し、これらがうまくシンクロすることが文化づくりで重要になります。 図1.組織、文化、人材、リーダーの相関関係 リーダーが実践する4種類のコミュニケーションアプローチ その上で、リーダーが実践するコミュニケーションのアプローチは以下の4種類があり、対話する相手に応じて使い分けていくことを意識することが重要です。 カウンセリング(過去志向・ASK型) メンタリング/アドバイス(過去志向・TELL型) コーチング(未来志向・ASK型) ティーチング(未来志向・TELL型) 図2.カウンセリング、メンタリング、コーチング、ティーチングの違い チームメンバーの育成を目指す際、目を向けるべきこと チームメンバーの育成を目指した対話を実践する際、チームメンバーの経験年数とリーダーによる権限移譲の相関関係に目を向ける必要があります。 実は過去志向のTELL型(教える)と未来志向のASK型(問いかける)コミュニケーションの間にはリーダーがぶつかる「魔の壁」が存在します。 教える相手の成長フェーズに合わせ、リーダー自身も変わる必要がありますが、これまでの型にはまり、「魔の壁」にぶつかることで未来志向のASK型(問いかけ)へとリーダーが成長できないケースが存在します。 そのような時は、自分が正解だとは思わず、常に「ひょっとして」という疑問を自分に投げかけ、俯瞰して状況を分析しつつ、謙虚な姿勢で答え探しをすることが大切です。 この「ひょっとして」という疑問を自分に対して投げかける習性を身につけることで効果的なコーチングの型を築きあげることができるのです。 図3.成長曲線の魔の壁:経験年数と権限委譲の相関関係 参加者の様子 講演の様子 会場:BASE managed by JustCo(虎ノ門) 講演の様子 会場:JustCo新宿ミライナタワー(新宿) 随所で講師の桜庭から参加者に対する質問やディスカッションが行われ、ワークショップのような双方向のコミュニケーションが見られる講演会となりました。 参加者がビジネス経験年数の少ない層からチームリーダー層まで幅広かったため、質問やコメントが多岐に渡り、参加者間での学びや共有が見られました。 始めから終わりまで参加者の高い熱量が感じられ、次回のセッションを求める声まで上がり、大盛況でイベントを終えました。 イベント概要 Just Evolve 次の自分へ行け〜迷わず進め!新米リーダーを未来へナビゲート〜 日時: 2024年3月5日(火) 場所: JustCo新宿ミライナタワー(新宿), BASE managed by JustCo(虎ノ門) 主催者:JustCo DK Japan株式会社 講師プロフィール 桜庭 理奈(さくらば りな)、35 CoCreation合同会社 CEO 元GEヘルスケア・ジャパン株式会社アジアパシフィック地域統括のHRビジネスパートナーとしてGEヘルスケア・ジャパンへ入社後、人事本部長、執行役員を歴任。 2020年に35CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)合同会社を設立し、多様な業態や成長ステージにある企業で人事部長不在の企業間で、シェアドCHROサービスを開発提供し、経営・組織・リーダーシップ開発コーチング、アドバイザリー活動を伴走型で支援。経営者や人事担当者向けの執筆コラムも多数出版。 国際コーチング連盟認定PCCコーチ。一般社団法人日本オントロジカル・コーチング協会 代表理事。1on1コーチ、チーム・コーチ、ヘルス・ウェルネスコーチとして活躍中。愛知県出身 35 CoCreation合同会社について 35 Co Creation(サンゴ コ・クリエーション)合同会社は、「ヒトの心・身・信の3つの領域の真を統合することを通して、リーダーシップの進化を大胆に促進し、地球を次世代へ手渡していくリーダー人材を開発する」をミッションに掲げ、日本初上陸オントロジカル・コーチングのアプローチに基づいた組織開発、次世代のリーダーシップ開発、人材育成、組織風土改善を支援するコーチング事業を運営しています。 オントロジカル・コーチングは、自分自身の価値観・信条・倫理観、思考傾向など自身の在り方を理解することで行動習慣を本質的に変える、ヒト起点の改革を支援します。この改革を通じて、組織における価値創造、人材育成、組織改革を実現します。

ダイバーシティ推進と企業の財務成功:なぜ多様性がビジネスに不可欠なのか

人材開発

2021年11月12日

本記事は、KEIEISHA TERRACE連載:戦略HRBPから見た、人・組織・事業・経営の現在&これから第6回企業における「ダイバーシティ」のリアル:多様性を増やせばいいってもんじゃない、より転載を行っております。* 今日は、あるチーム内で実際に起こったダイアローグの引用から始めます。 Aさん「いよいようちのチームもコスト削減の施策を何らかの形で考えなければならない局面に差し掛かりました」 Bさん「会社は新しいことにチャレンジすると言いながら、うちのチームの業務負担は増えるばかりだし、前の仕事も引き続きやりながら、新しい仕事がその上に乗っかってくるだけ。経費削減で、ましてやチームの人数を縮小するなんて、考えられるわけありませんよ」 Cさん「確かに前から取り組んできたものを、すべて踏襲し維持しながら、単純に業務だけ増やせば、負担が増えるのは容易に想像がつきますね。では、もしこれを、チームが最大価値を生み出せることだけにフォーカスすることを考えるきっかけと捉えるのであれば、何が起こるでしょうか。続けるべきものもある中で、捨てるべきもの、辞めるべきもの、変えるべきものはないでしょうか」 Aさん「なるほど、そうですね。こういう機会がないと、実際には今までのやり方を変えて何かをさらに生み出そうというモチベーションや、私たちチームの本質的な存在意義の見直しなど、なかなか着手できませんよね」 Bさん「お二人が言っていることは頭では理解できますが、人の心はそう簡単に切り替えられるでしょうか。この有事を好機と捉えて、ポジティブなメッセージだけで引導するとすれば、チームメンバーの中には反発する人も出てくると思います。だからこそ、ロジカルに頭に訴えかけるメッセージだけではなく、彼らの心に訴えかけるメッセージや伝え方も大切だと思います」 Cさん「そこは確かに私の視点では欠けている部分ですね。そうするとこの3人のリーダーの間では、我々チームの存在意義と価値貢献について本質的な議論や見直しをするのには、良いタイミングと捉えつつ、痛みを伴う変革をチームメンバーにも理解してもらった上で実際のアクションに着手できるように、彼らへの感謝の念を忘れずにメッセージに盛り込むというのは、いかがでしょうか」 Bさん「それは良い案ですね。賛成です」 Aさん「私も同感です」 真の「ダイバーシティ」は少数派カテゴリーの人数比率を増やすことが目的ではない 今日は昨今の企業や経営を語る上では、耳にしないことがないキーワード「ダイバーシティ」の真意に迫ります。かつて日本企業では、年功序列や終身雇用を中心に、画一的な働き方や男性を中心とした就労人口比を特徴としていました。その後女性の社会進出や男女共同参画などの国際的な流れが後押しし、まずは女性の活躍という視点から、「より多様な人材の活用」が「ダイバーシティ」の主なテーマであったのです。 2004年に経済同友会が人事戦略として「ダイバーシティ」の大切さを提議したことを皮切りに、現代に至っては、「ダイバーシティ」のテーマは、いかに多様な人材を活かし、能力が最大限発揮できる機会を提供してイノベーションを起こす経営を実行するか、に移行しています。 これは、ひとえに日本における労働人口の減少や、私たちの働くことへの価値観の変化や多様化、顧客ニーズの多様化と国を超えたボーダーレスな国際化など、時代や社会の市況が大きく転換していることと相関しています。平たく言えば全員参加型社会の実現を目指して、企業を含めて社会全体で「ダイバーシティ」に注目が集まっているのも、なるほど、頷けます。 ただし、「ダイバーシティ」の重要性について声高に言われるものの、他方で「ダイバーシティ」の取り組み自体は、まだまだ多様性のカテゴリーのうち、比較的該当者が少数であるカテゴリーの組織における占有比率を上げることが目的となってしまっている企業の取り組みも、多く見られます。例として、女性管理職の比率を202〇年までに△%まで引き上げる、であったり、障碍者の法的雇用率を守るために障碍者枠で〇人採用する、といった取り組みです。 取り組み自体は、一つひとつ大切なものではありますが、それらはあくまでも方法論:HOW論であり、なぜ組織に多様性を増やすことが必要であるのか:WHY論や、それによって何を成し遂げようとしているのかの経営ミッションや事業ビジョン:WHAT論が、すっかり抜け落ちているのに、HOW論が目的にすり替わっているケースもあります。 もし経営者の皆さんや皆さんの組織で、「ダイバーシティ」の推進を検討されている、または、推進をすでに行っているが、どうも企業文化として根付かない、または、多くの社員にとっては他人事のように捉えられており、一部の志が高いメンバーだけが声高に「ダイバーシティ」の重要性を訴えかけ、しまいには、周りの関心や協力が得られずに、勢いよくスタートを切った取り組みも、次第に尻すぼみになってしまうことはないでしょうか。 「ダイバーシティ」の普及にいち早く経営課題として取り組んだカルビー社では、経営リーダートップ自らが「ダイバーシティ」指標を到達することが、経営目標に直結しているかを、繰り返しリーダー・メッセージでも伝えていますし、各事業部のリーダーたちには、到達目標へのコミットメントを宣言してもらうなど、先のWHYとWHATがありきで、HOWである女性活躍の場を設けることや、働き方改革等に着手している様子が窺えます。 「ダイバーシティ」を強力に推進&実装できている企業は財務結果も優れているという結論 それでは「ダイバーシティ」について、企業が全社を揚げて取り組むWHYとは何か。米国コンサルティング会社である、マッキンゼー・アンド・カンパニーは「ダイバーシティ」に関するレポートを例年発表しています。 そこには業界横断的に選ばれた約360社を対象にした調査結果を元に作成されており、特にその中で着目すべきは、「ダイバーシティ」と企業の財務業績との相関関係です。以下の8点について、明白な関係性を明らかにしています: 人種・民族的多様性において、上位25%以内に入る企業は、当該業界の中央値よりも30%以上財務パフォーマンスが高い傾向にある 性別の多様性において上位25%以内に入る企業は、当該業界の中央値よりも15%以上財務パフォーマンスが高い傾向にある 性別、人種・民族の多様性で下位25%以内に入る企業は、平均的な企業と比べ、財務リターンが当該業界の中央値を超える可能性が低い 人種・民族的多様性と財務パフォーマンスは比例関係にあり、多様性が10%高まるにつれて、営業利益は0.8%向上した すでに一定の取り組みがなされている性別の多様性より、人種・民族的多様性を高める方が、財務パフォーマンスにより大きな影響を与える 上級経営幹部の性別の多様性は、高い財務パフォーマンスに繋がっており、多様性が10%向上するにつれて営業利益は3-5%向上した 性別の多様性と人種・民族的多様性の双方において上位25%に入った企業は、存在しなった 同国同業者が違う財務パフォーマンスを示していることは、「ダイバーシティ」がマーケットシェアを高める差別的要素となっていることを意味している 冒頭のあるリーダーチームの意思決定に至るまでの、対話のやり取りをもう一度眺めてみましょう。3人のリーダーチームが、多様性のある考え方を持ち寄らなければ、顧客志向や従業員満足度、意思決定の制度などの向上を見込むことは、難しいのではないでしょうか。先のデータポイントの相関性からは、「多様なリーダーシップを取り入れた企業は、より財務的にも成功する」好循環を生むと読みかえることもできます。 終わりなき「ダイバーシティ」の達成:経営者と人事の苦悩 他方で、「ダイバーシティ」の達成の困難さについて語る、企業の経営者や人事を司る者の悩みは尽きないと想像します。それはなぜでしょうか。私たちが生きるこの時代で、様々な国境や業界、企業など「境目」が取っ払われて多様な人材が越境し交流することで、イノベーションや成長を模索していくことが、成功への糸口だと確信している経営者がいる一方で、いまいち各社の「ダイバーシティ」の取り組みが一過性のもので継続していかないことや、組織の多様性を最大限に活かす企業文化を醸成するところまで到達していないことも、課題として感じているはずです。 「ダイバーシティ」を高めることのWHYやWHATから始まり、様々な施策であるHOWに着手するとともに、昨今「ダイバーシティ」とペアで語られる「インクルージョン」にどうもヒントが隠されているようです。次号では、継続して「ダイバーシティ」の関連トピックとして、「インクルージョン」にスポットライトを当てます。それではまた。 桜庭 理奈 2020年に35 CoCreation合同会社を設立。経営・組織・リーダーシップ開発コーチング、講演活動を通して、多様なステージにある企業や経営者を支援している。 *転載元記事: 企業における「ダイバーシティ」のリアル:多様性を増やせばいいってもんじゃない| KEIEISHA TERRACE