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多様化するチームと離職率の壁に向き合う コーチングが引き出した、シニアメンバーの「意識の変化」

2026年1月14日

コーン・フェリー・ジャパン

業種 外資系コンサルティング
website https://www.kornferry.com/jp

コーチングを通して次世代リーダー育成を支援する、Coaching Leaders Japan(コーチング・リーダーズ・ジャパン)です。今回は、人・組織領域を専門とするコンサルティング会社のコーン・フェリー・ジャパン (Korn Ferry Japan)様の事例をご紹介します。

同社のクライアントのエンゲージメントサーベイなどを担当する部署である「LISTEN」チームは、ここ数年大きな変化の波に直面していました。

若手メンバーの離職率の上昇、働き方の急激な変化、そして外国籍メンバーの参画。
チームの多様化が進む一方で、「これまでのやり方が通用しなくなっている」という感覚が、シニアメンバーの間で共有され始めていたといいます。

今回は、LISTENチームのマネージャーである鈴木晶子さんと、同じくシニアメンバーの末岡千里さんに、コーチング導入の背景と、その手応えについてお話を伺いました。

若手の離職率上昇が突きつけた「見過ごせない違和感」

— コーチング導入前、チームにはどのような課題があったのでしょうか。

鈴木さん:ここ数年、若手メンバーの離職が続いたことが、最も大きな課題でした。以前は比較的、長く働く人が多い職場だったのですが、入社から2〜3年で辞めてしまうケースが相次ぎ、「これは一時的な問題ではない」と感じるようになったんです。

ただ、当時は何が原因なのか、はっきりと分かっていたわけではありませんでした。コロナ禍をきっかけに働き方は一気にフルリモートへと移行し、コミュニケーションやマネジメントの前提そのものが大きく変わっていきました。さらに昨年からは、日本チームとして初めて外国籍のメンバーを迎え、チームの構成自体も大きく変化しました。

若手の定着、多様化するメンバー構成、そして急激な働き方の変化。こうした変化が同時に押し寄せる中で、「これまでのやり方のままで本当にいいのだろうか」という疑問が強くなっていきました。チームのあり方やマネジメントの方法について、何らかの手を打たなければならない。そんな危機感が、常に根底にありましたね。

末岡さん:私自身も、人が辞めていく以上、チームの中に何かしら満たされていない要素があるはずだ、という感覚はずっとありました。「若手が続かない」で済ませてしまうのではなく、自分たちが見落としているものがあるのではないか、と。

鈴木さん:実際に、辞めていったメンバーからは「この先、ここで頑張っていくイメージが持てない」という声もありました。そうした言葉を重ねていく中で、長くいるメンバーと、そうでないメンバーの間に、意識や前提のズレが生まれているのではないか。そんな違和感が、次第に大きくなっていきました。

「変わるべきは、まず自分たち」 シニアメンバーで始めたコーチング

— 今回、コーチングにはシニアメンバー4名のみが参加されていますね。

鈴木さん:若手が一人辞めることのインパクトは、想像以上に大きいんです。場合によっては、プロジェクト自体が立ち行かなくなることもある。そのたびにシニアが必死に拾い上げて回している状態は、組織として決して健全でも、サステナブルでもないと感じていました。

だからこそ「このままというわけにはいかない」という危機感は、シニアメンバーの間で共通していたと思います。心理的にもタフなプロセスになることは覚悟したうえで、「まずは自分たちから始めよう」と、自然と合意できたと思います。

— 実際にコーチングを受けてみて、いかがでしたか。

末岡さん:本格的なコーチングを受けたのは、今回が初めてでした。正直、最初は戸惑いもありましたね。

ただ、最初に「普段は踏み込まないところまで考える」「心理的な違和感や居心地の悪さを感じることもある」という説明があったのが、とても印象に残っています。どこまで踏み込む場なのかを事前に共有してもらえたことで、「ここまでやるんだ」という覚悟が持てました。

セッションでは、日常業務ではまず出てこない問いが投げかけられます。「自分は何を大切にしているのか」「なぜ、そう感じるのか」。一人で考えているだけでは辿り着けない領域まで、考えさせられました。

鈴木さん:自分たちが何を考え、何を目指しているのかを言語化する。そのプロセスそのものに、価値があったと感じています。

コーチングを通して、改めて浮き彫りになったのが、シニアとジュニアの間のコミュニケーション不足でした。コロナ前は、皆が同じオフィスで働いていたので、相手の表情を見たり、ちょっとしたことをすぐに確認したりすることができていました。毎日顔を合わせる中で、自然と信頼関係も育まれていたため、コミュニケーションが大きな問題になることは、あまりなかったと思います。

それがリモートワークが当たり前になると、チーム内の会話はプロジェクトの進行や締め切りといった業務連絡が中心になり、メンバー一人ひとりの価値観や信念、個性に触れる機会は、少なくなってしまいました。新しく加わったメンバーにとっては、難しい環境だったのではないかと思います。

— 「当たり前」のやり方のままでは十分なケアができていなかった。そうした気づきを経て、どのようなアクションを取られたのですか?

鈴木さん:まず始めに、若手メンバーがどのように考えているのかを知るための機会を設けました。あえてシニアメンバーは参加せず、メンター的な立場の先輩にファシリテーションをお願いしながら、ジュニアメンバーから組織に対する課題感や強みについて、できるだけ具体的なフィードバックをもらう場にしました。その結果、想定していた以上に多くの意見が集まりました。

その後、それらの声を私たちシニアが読み、話し合いました。そしてそれをどう感じ、どう受け止めたのかを、改めて全体の場で共有しました。経験年数の長い私たちにとって、こうしたプロセスそのものが新しい挑戦だったと感じています。

そして今後のコミュニケーションを促進させる仕組みとして、業務やプロジェクトの進行とは直接関係のない話をするミーティングを、意図的に設定することに決めました。普段の業務の文脈から一度離れ、互いの考えや感じていることに向き合うための時間です。

— そうした新たな施策によって、変化を感じることはありましたか?

鈴木さん:シニアの受け止めを共有したミーティングの反応が、とても良かったんです。「直感的に、前よりうまくいく気がします」と言ってくれたメンバーもいて。私たちが自分たちの考えや迷いを開示するだけでも、メンバーにとっては安心感につながるのだと実感しました。

もちろん、何かが一気に変わったわけではありません。それでも、これまであまり発言することのなかったメンバーからも、少しずつ意見が出るようになり、確かな変化の兆しは感じています。劇的ではなくても、こうした小さな積み重ねが、やがて大きな変化につながっていくのだと思っています。

末岡さん:私たち自身も、コーチングを受けて最初の頃は本音を話すことに慣れていませんでした。でも、回を重ねることで慣れ、「ここは本音を出していい場なんだ」という感覚が、少しずつ共有されてきたことで、安心して気持ちを吐露できるようになりました。今は、その感覚をチーム全体にも広げていく段階だと思っています。

「善意でやっている」という前提に立てたことが、大きな転換点

末岡さん:セッションの中で、具体的な考え方や実践的なヒントを得られたことももちろん大きかったのですが、それ以上に印象に残っているのは、私たちの立ち位置そのものを捉え直せたことでした。

人が次々と辞めていく状況が続く中で、私たちはいつの間にか、「自分たちには何か根本的な問題があるのではないか」と、自分たち自身を疑うようになっていたんです。

そんな中で 「シニアメンバーは善意でやっている。このチームを良くしようとして、良かれと思って動いている。そのことは、正直に伝えていい」と桜庭さんに言ってもらえたことが、とても印象に残っています。

もちろん、見直すべき点や、変えていかなければならない部分はたくさんあります。ただ、「このチームを前に進めたい」「みんなが前向きに働ける場にしたい」という思いそのものまで否定する必要はないし、むしろ大切にしていい。そう気づけたことは、私にとって大きな収穫でした。

鈴木さん:加えて、「それでも伝わらないケースはあるし、それはもう手放していい問題でもある」というメッセージもありました。その言葉に、私自身も大きく救われた気がします。

コンサルティング会社にはありがちですが、弊社も、いわゆる個人事業主的な文化が強く、一定の管理は行いますが、基本的には「自由に、プロジェクトベースで動く」ことを良しとしてきました。

ただ、それだけではもう立ち行かなくなっている、という感覚は以前からありました。だから私にとって、コーチングに取り組むという選択そのものが、ある種の「覚悟」だったのだと思います。ここに本気でテコ入れをする。その意思を、チームに対して分かりやすい形で示す機会にもなりました。

価値観の違いを受け止め、チームの底力に

— 今後、どんなチームを目指していきたいですか?

末岡さん:やはり「もっと強くて、いいチームにしたい」という大きな目的があります。ただ、シニアが「いい」と感じていることと、ジュニアが「いい」と感じていることは、必ずしも同じではありません。

だからこそ、相手が何を大切にしているのか、何に違和感や不満を感じているのかを、敏感に感じ取りながら進めることが重要だと感じています。桜庭さんのコーチングを振り返ると、私たちの反応を見ながら、問いを柔軟に変えていらっしゃったのが印象的でした。まったく同じようにはできないかもしれませんが、相手の出方や感じていることを意識しつつ、同時に目指すゴールは見失わない。このバランスを意識することの大切さを学びました。

鈴木さん:人によって、物事の受け取り方は本当に違いますよね。自分自身、キャリアを重ねるにつれて、若いメンバーの考えが見えにくくなっていると感じることもあります。だからこそ、一方的に判断するのではなく、歩み寄り、理解しようとする姿勢を持ち続けることが大切だと思っています。

今は外部環境の変化が非常に速い時代です。その変化に対応できる「しなやかさ」も、チームには欠かせない要素だと感じています。しなやかさは、多様な個性が発揮されることで生まれるものだとも思います。決められた役割だけをこなすのではなく、その時々で自分の得意なこと、できることを活かし、活躍の幅を広げられる。そうした土壌が整っているチームであれば、より柔軟で、成長し続けられる組織になっていくはずです。そんな“底力”のあるチームが理想ですね。

会社概要

■コーン・フェリー・ジャパン
コーン・フェリーは、米国ロサンゼルスに本社を置くグローバルな組織コンサルティングファームです。クライアントの組織設計、適材適所を支援し、社員の処遇・育成・動機付けといった課題についてもコンサルテーションを提供します。さらに、専門性を高めることによる人材のキャリアアップを支援します。
HP:https://www.kornferry.com/jp

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