最強の「個」は、いかにして最高の「チーム」に変わるのか。jinjerが挑んだ、組織の核心に触れる2日間
2026年3月4日
jinjer株式会社
| 業種 | 国内HRクラウドサービス(外資ファンド出資) |
|---|---|
| website | https://jinjer.co.jp/ |
「真のシナジーを生むために、あえて立ち止まる決断をした」
インタビューの冒頭、口から漏れたのは急成長の裏側で組織が直面していた切実な葛藤でした。
2021年のスピンアウトを経て、HRテック業界で躍進を続ける「jinjer」。
2025年春にはグローバル経験豊富なCXOたちが参画し、個の能力はかつてないほど高まりました。
しかし、急速な変化のなかで、目指すべき理想の解像度を揃えるための「対話の時間」が、物理的に不足していたのも事実でした。
個々の「正解」を、組織の「確信」へと変えていくために必要だったのは、経営チームのあり方に深く踏み込む「外部の視点」でした。パートナーに選ばれたのは、Coaching Leaders Japan。
経営チームはオフサイト合宿を起点に、各組織の奥底にある「本音」と向き合うプロセスへと踏み出します。
本記事では、同社 人事本部 本部長の末廣 征さんに、オフサイト合宿を通じて起きた変化と、その背景にあるプロセスについて詳しく伺いました。
成長の裏側で、経営チームは「未来」を言葉にする時間を求めていた
ーまず、今回このプログラムを検討された背景から教えてください。
末廣さん:「ジンジャー」は、2016年に誕生しました。プロダクトは順調に拡大し、事業としても一貫して成長を続け、2021年にjinjer株式会社としてスピンアウトという形で独立しています。
当時は、第二創業を見据えた資本整理やガバナンスの再構築といった「経営基盤の徹底的な強化」に注力してきました。事業としては成長していましたが、正直に言えば「未来の話が言語化できていない」状態が続いていました。つまり、経営としては次なる飛躍に向けた土台作りに全リソースを割いていた、非常に密度の濃いフェーズだったと言えます。
ー経営チームの構成にも、大きな変化があったのでしょうか。
末廣さん:2024年9月のファンド参画を機に、経営体制を大きく刷新しました。2025年5月にはCEO、CFO、CCOが外部から加わり、10名弱の経営チームのうち約8割が入れ替わるという、まさに第二創業を象徴する変化です。
新たに参画したCXOは、いずれもグローバル経験が豊富で、個々の能力は非常に高い。ただ、経営陣が短期間で入れ替わったこともあり、各自が自分の役割やミッションのキャッチアップに追われる日々が続いていました。その結果、「共通の判断軸」や「大切にしたい価値観」を腰を据えてすり合わせる時間を、ほとんど持てていなかったのが実情です。
またそもそもメンバー同士が、お互いの価値観や背景を深く知る間もないまま、プロとして実直に仕事に向き合う。その結果、個々の力は強いのに、チームとしての一貫性が揺らぎかねないという、急成長組織特有の「成長痛」に直面していました。
CEOの冨永も、新体制を牽引するリーダーとして、誰よりもその危機感を強く抱いていました。だからこそ、日々のオペレーションから一度離れ、経営チームが「真のワンチーム」として再定義される場が必要だと確信したのです。
必要だったのは「研修」ではなく、経営チームへの“介入”
―チームビルディングには、研修やワークショップなど多くの選択肢があります。その中でなぜ、CLJによるオフサイト合宿を選ばれたのでしょうか。
末廣さん:一番の理由は、(CLJ代表の桜庭)理奈さんが「経営と対等に話せる存在」だったからです。
今回私たちが求めていたのは、「経営チームそのものの再構築」でした。事業構造を深く理解し、経営の言語で対話できなければ、百戦錬磨のCXOたちを本気で動かすことはできません。理奈さんのグローバルな思考と、日本特有の組織文化への精通、そして経営レベルの人事経験は、まさに私たちが求めていたものでした。
ー実際の合宿で、特に印象に残っているシーンを教えてください。
末廣さん:初日に行った「アシミュレーション(New Leader Assimilation)」ですね。日本ではまだあまり聞き馴染みのない手法だと思いますが、今回の合宿を象徴する、とても意味のある時間でした。
アシミレーションとは?
新しいリーダーとメンバー間、または上司と部下の間の相互理解を深め、円滑な信頼関係を構築する組織開発手法。上司抜きで部下たちが本音で語り合い、その内容を匿名で上司にフィードバックしてチームの課題を解決し、一体感を高める目的で行われます。
当日はまず理奈さんが、アシミレーション対象者であるCXOメンバーに、事前に行っていたサーベイ結果をもとに客観的にレポーティングを行いました。
本人が内容を理解したうえで全員が合流し、不明点を質問したり、「なぜそう感じたのか」「どういう意図だったのか」を本人が言葉にして応答していく。そうしたやり取りを通じて、関係性をつなぎ直し、相互理解を深めていく時間になったと思います。
—場の空気は、かなり緊張感があったのではないですか。
末廣さん:正直、ありました。
組織の中ではどうしても空気を読んでしまい「本人の前では言いにくいこと」を飲み込んでしまいがちです。しかし、この手法は個人を責めるためではなく、「チームが機能するために、今何が起きているのか」を浮き彫りにします。
リーダーとしてどこが評価され、どこが課題なのか。何が足りていて、何がまだ不足しているのか。それを「誰かの発言」ではなく、「全体としての傾向」として言語化するには、かなりのスキルと場づくりが必要ですし、恐れや緊張感も伴います。
だからこそ、事前にサーベイを行い、しっかり準備したうえで当日を迎えられた流れは、とてもよく設計されていたと感じました。
もちろん、こうした取り組みに「百点満点」はありません。でも、「ここに触れないと先に進めない」という核心には、確実に近づけたと思っています。
ー逃げずに核心に向き合おうとする、経営チームの覚悟が伝わります。
末廣さん:その張り詰めた空気を劇的に変えたのが、意外にも「カーリング」だったんです。午後のアクティビティとしてカーリング場へ向かったのですが、これがもう、予想を遥かに超える盛り上がりで(笑)。
最後、CEOの一投でチームが負けた瞬間、会場全体が大爆笑に包まれました。それまで「トップとして完璧でいなければ」と肩肘を張っていたCEOが、メンバーに突っ込まれ、笑われ、それを彼自身も楽しそうに受け入れている。あの瞬間に、心理的なハードルが一気に崩れ、場の温度が変わりました。理屈ではなく、一人の人間として距離が縮まった感覚がありました。
そうした流れの中で迎えた一日の最後には、メンバー間で感謝や期待のメッセージを書き合いました。こうした「ほんのり温かい」やり取りがあったことも、チームを結び直すうえで非常に大きかったです。
翌朝はこれからの戦略について議論する時間だったんですけど、真剣な中でもお互いに笑いながら突っ込み合えるような、オープンな空気が生まれていました。

合宿後、経営会議から「重苦しさ」が消えた
ー合宿を終えて、日常の業務に戻られた後、どのような変化がありましたか?
末廣さん:合宿後、経営会議の参加メンバーから「雰囲気がまったく違いますね」と言われたことが、とても印象に残っています。それ以前の経営会議を振り返ると、正直なところ、どこかコミュニケーションが詰まっているような感覚がありました。言いたいことを完全には言い切れないまま、議論が進んでいく場面も少なくなかったと思います。
それと比べると、お互いに言いたいことをきちんと言い合いながらも、議論は建設的に前へ進んでいる。そこには、互いをリスペクトし、認め合おうとする空気が確かにありました。
そんな中で、年末に向けた中期経営計画の重要プロジェクトが立ち上がったことも、今回の合宿が生んだ大きな成果の一つですね。
―今回、あえてオフィスを離れた「オフサイト」で実施した意味についてはどう感じていますか?
末廣さん:迷いなく、「絶対にオフサイトであるべきだ」と断言できます。
日々のオフィスワークにおいて、絶え間なく届く連絡への対応や様々な意思決定への対応、煩雑なタスク処理等に意識が分散されてしまうことは、避けがたい現実です。
だからこそ、私服に着替え、スマホを置き、空気の澄んだ場所で、いつもと違うリズムで過ごす。この「非日常性」こそが、凝り固まったマインドを解き放つために不可欠でした。そこにプロのコーチという存在が加わることで、初めて思考の枠を外すことができたのだと思います。
―「本音で向き合えるチーム」へと進化した今、今後はどのような姿を目指していきたいですか?
末廣さん:私たちのチームは、バックグラウンドが全く異なるプロフェッショナルたちが集まった組織です。だからこそ排他的にならず、お互いのスペシャリティをリスペクトし、高め合いたい。個々の能力が単なる足し算ではなく掛け算になって、相乗効果を生み出すインクルージョンが体現された経営チームでありたいと思っています。

会社概要
■jinjer株式会社
ジンジャーは、人事労務・勤怠管理・給与計算・人事評価・サーベイ・データ分析といった幅広い人事業務を、1つの人事データベースで管理できる統合型人事システムです。 1つの人事データベースだから実現できる「正しい人事データ」は、AIによる定型業務の自動化から人的資本経営に向けた高度なデータ活用までを実現し、業務効率化と組織の意思決定の質を高め、ひとの可能性を最大解放する未来を創出します。
HP:https://jinjer.co.jp/

