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グローバル企業が挑むマネジメント改革。Trip.comがコーチングで実現した「人が育つ」組織とは?

2025年8月19日

株式会社Trip.com Air Ticketing Japan

業種 外資系オンライン旅行プラットフォーム
website https://jp.trip.com/

今回は、グローバルに事業を展開する大手旅行サイト Trip .com Air Ticketing Japan様の事例をご紹介します。

同社のコールセンターは、顧客と直接向き合う重要な接点である一方で、高い離職率やリーダー育成の難しさなど、独自の課題を抱えています。そんな中、コーチングを活用したマネジメント改革に乗り出したのが、同社カスタマーサポートセンター シニアサービスマネージャー清水 憲一さんオペレーションマネージャー金子身佳さんです。

海外本社の日本法人という環境で、どのようにして課題と向き合い、離職率の改善につなげているのか。詳しくお話を伺いました。

形骸化した1on1と高止まりする離職率

ーTrip.comがコーチングを導入された背景には、どのような課題があったのでしょうか。

清水さん:昨年10月に入社して、まず強く感じたのは、上司のマネジメントが非常に形式的になっているという点でした。特に、定期的に実施される1on1は、「義務だからやっている」という雰囲気が強く、社員一人ひとりのパフォーマンスを最大限に引き出すという本来の目的を果たせていないと感じていました。

この背景には、2つの大きな課題がありました。一つ目は、多くのコールセンターと同様に、ハイパフォーマーがそのままチームリーダーに昇格しているという組織的な課題です。

優秀なプレイヤーである彼らは、マネジメントの体系的な教育を受けないまま管理職になります。そのため、どうしても1on1は部下の内面や想いを引き出す場ではなく、KPIの数字を追うだけの事務的な時間になりがちです。
その結果、社員のモチベーションは上がらず、会社全体としても高い離職率が問題になっていました。

ーもう一つの課題は、どのような点でしたか?

金子さん:もう一つは、日本の文脈に即したマネジメント教育が不足していたことです。

これまで、研修といえば本社から派遣されたトレーナーチームによる英語でのリーダー研修が主でした。採用時に英語力は重視しているため研修内容は理解できるのですが、活発な議論や意見交換が生まれることはなかなかありませんでした。

たとえば、ディベートの時間があっても沈黙が流れてしまうことがよくありました。「みんなで事例をシェアしてください」と促しても、なかなか発言が出ない。自分の気持ちや考えを深く掘り下げ、それを日本語で語り合う場がないことが大きな課題だと感じていました。

清水さん: 研修内容も、海外のケーススタディが多く、日本の市場や顧客に即した内容ではありませんでした。1対1のロールプレイをしても、どこか自分たちの現実とはフィットしない感覚があり、学んだことを現場で活かすのが難しいと感じていたのです。

そういった意味でも、マネジメントの本質を日本語で深く学び、自分たちの文脈に合わせた実践が必要だという強い課題感がありました。

「数字」か「プロセス」か?本社との対立を乗り越えた「日本流マネジメント」への挑戦

ー 日本語でのコーチング導入に対して、本社からの理解を得る上での障壁はありましたか?

清水さん:実は、当初はかなりの反発がありました。「すでに研修をやっているのに、なぜ日本語でなければならないんだ?英語ができるメンバーを採用しているじゃないか」と。

この高いハードルの背景には、海外本社と日本の文化的な考え方の違いがあります。

例えば、私が部下の評価で「最終的には目標に届かなかったが、新しいチャレンジをしたから評価は5段階中4にしたい」と伝えても、上司から「結果が出ていないのだから、評価は3か2だろう」と返されることがありました。このように、本国の文化ではどうしても『成果主義』が強く、結果に至るプロセスやアプローチは軽視されがちです。

こうしたカルチャーギャップの中で、どう私のグループをマネジメントするかを、これまでも考え続けてきました。

私たちのコールセンターが日々向き合うのは、日本の顧客です。日本の市場や顧客に即したサービスを提供するためには、日本の商習慣や文化に合わせたマネジメントが不可欠だと思っています。つまり結果も大事ですが、「正しいアプローチができているか」が重要です。なぜなら、「何を考え、どのような行動をとったか」というアプローチこそが、社員の成長や、その後の成果に不可欠だからです。

日本語での研修は、この「正しいアプローチ」を社員に浸透させるための重要な施策の一つです。言語の壁を取り払い、共通の理解を深めることで、単なる数字の達成だけでなく、顧客対応の質やチーム全体のパフォーマンス向上につながると信じています。

ー 「アプローチ」を重視する考え方が、コーチング導入の決め手となったのですね。

清水さん:その通りです。コーチングは「正しいアプローチ」をメンバーが自律的に見つけ出すための重要な一歩だと考えています。

今回、課題解決策として、コーチングの他にも管理者研修やマネジメント研修を検討しましたが、それらはあくまで一時的な知識やスキルを学ぶ「対症療法」に過ぎません。リーダーの意識そのものを変え、自ら行動を起こせるようにするためには、表面的なテクニックではなく、考え方そのものを一新してもらう必要がある。そう考えたときに、コーチングこそが最適な手法なのではと思いました。

そんな中でCoaching Leaders Japanが提供する「オントロジカルコーチング」という言葉に出会いました。聞き慣れない言葉でしたが、その定義にあった「本質的な変化」という言葉に強く惹かれました。私たちが求めていたのは、上辺だけではない、人の「在り方(Being)」から変わるような変革だったからです。このアプローチなら間違いないと確信しました。

経験者も未経験者も「腹落ち」する、確かな手応え

ープログラムは全5回の予定で、現在3回目が終了したばかりと伺いました。現時点での率直な感想はいかがでしょうか?

金子さん:非常に手応えを感じています。私たちの状況に合わせて言葉を選び、事前に伝えた課題を反映したプログラムを組んでくださっているので、「しっくりくる」感覚が強いですね。

今回受講しているのはチームリーダー層10名ですが、その半数はマネジメント経験が浅いメンバーです。彼らは研修内容を一つひとつ食い入るようにメモを取り、熱心に参加してくれています。

一方で、私自身を含む経験の長いメンバーにとっても、これまで漠然と自己流でやってきたことが、きちんと文章で整理され、プロセスとして説明してもらえるため、頭の中が整理される感覚があります。経験の有無に関わらず、両方の層に効果的に響いていると感じていますね。

ー研修での気づきは、すでに日々の業務に反映されていますか?

金子さん:研修を通じて、普段は共有されない各リーダーの課題感や工夫を知る機会となり、チーム全体の理解が深まっています。

たとえば、「どうやって部下に仕事を任せていくか」という点で課題を感じている声が多かったので、私自身、「こういうふうに任せてみたらどうか」「他のメンバーでもできる人がいるから、そちらに回した方が良いのではないか」という形で、適切に提案できるようになりました。

特に印象的だったのは、あるメンバーが研修後に見せてくれたメモです。これまでチームリーダーからのフィードバックは、ミスやエラーといったネガティブなものが中心で、「良いパフォーマンスができて当たり前」という認識でした。しかし、研修で「まずはできていることに目を向けて認める」というフィードバックの順序を学び、「早速取り入れたい」と話してくれました。

これから実際の1on1でも、ネガティブなフィードバックに終始するのではなく、建設的なコミュニケーションへと変化していくと期待しています。

ーマネジメント改革の取り組みが、会社のカルチャー自体を変えていくのではないかという期待を感じます。その手応えはいかがですか? 

金子さん: まさに、「ギシギシと音を立てながら、車輪が回り始めた」ような感覚です。少しずつではありますが、確実に前に進み出しているのを感じます。コーチングを含めた人事的な取り組みの成果として、すでに退職率の減少という具体的な結果も出てきています。

清水さん:もちろん、コールセンターとしてKPI達成は至上命題です。しかし、それはあくまで仕事の「テクニック」に過ぎません。テクニックは経験を積めば身につきますが、それだけでは本当の意味で組織を強くすることはできません。

働く上で、人と対峙することは避けて通れません。私たちのチームには若いメンバーが多いので、もし彼らが当社を離れることになったとしても、ここで学んだことが他の場所でも役立つような、一生もののスキルを身につけてほしいと思っています。

そういう意味でも、コーチングは単なる業務スキルではなく、「どうすれば人が生き生きと働き、成果を出せるのか」という本質的な問いへのアプローチだと考えています。これからもチーム一人ひとりが「人をマネジメントするとはどういうことか」を深く考え、実践していくことで、メンバーの成長を支援し、組織全体の力を高めていきたいです。

■Trip .com Air Ticketing Japan
Trip.com は、39の国と地域の24⾔語および35の現地通貨に対応した国際的なワンストップトラベルサービスプロバイダーです。世界220の国と地域にある150万軒以上のホテルと、3,400の空港を発着する640社以上の航空会社のフライトを網羅した巨⼤なネットワークを有するTrip.com は、24時間年中無休の世界⽔準の多⾔語カスタマーサービスに加え、エジンバラ、東京、ソウルに設置されているカスタマーサービスセンターから、世界中の何百万⼈もの旅⾏者が作る「最⾼の旅⾏体験」をお⼿伝いしています。
HP:https://jp.trip.com/

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